履歴書解析テストの固定データとは、配布された書式から項目を読み取る処理を繰り返し確かめるために用意する、入力と期待される結果の組のことです。書式には共通の規格がないため、確かめるべき対象は形式の正しさではなく、版面が変わっても項目を拾えるかどうかになります。この記事では、その理由と、固定データの組み立て方を確認します。
履歴書の解析に共通の書式規格がないのはなぜか?
履歴書は、業務の道具として自然に育った文書だからです。誰かが定めた規格に沿って書かれているのではなく、採用の現場や作成の道具の都合で少しずつ形が変わってきました。
そのため、同じ内容でも並びの順序、見出しの言葉、余白の取り方が文書ごとに違います。節の位置が左右に分かれることもあれば、表のなかに収まることもあります。解析の側から見ると、これは「規格が守られていない」のではなく「規格が存在しない」状態です。
前提がこうである以上、確かめるべきことは形式の一致ではありません。版面が変わったときに、必要な項目をどこまで拾えるかという拾得の度合いになります。
解析テストはどんな版面の変種を覆うべきか?
覆うべきは、実際に現れる形の違いです。思いつくものを並べると、次のようになります。
| 版面の形 | 起きること | 確かめたい点 |
|---|---|---|
| 見出しの順序が違う | 位置を頼りにした抽出が外れる | 見出しの言葉で拾えるか |
| 左右の段組み | 行の読み順が混ざる | 段をまたいでも崩れないか |
| 表のなかに収まる | 罫線と文字が混じる | 区切りの扱いが正しいか |
| 経歴が文章で書かれる | 年月が文中に埋もれる | 文中から期間を拾えるか |
| 項目が欠けている | 空欄が続く | 欠落として扱えるか |
| 同じ項目が複数回出る | 候補が並ぶ | どれを採るか決まっているか |
いずれも、抽出の手順が前提にしているものが崩れる形です。逆に言えば、これらの変種を用意しておけば、手順の弱い場所が見えてきます。
段組みや表の版面で解析が崩れる理由
文字の並びは、版面のなかで必ずしも読みの順に並んでいません。左右に分かれた段では、一行ずつ追うと右の段と左の段の内容が交互に混ざります。表のなかでは、罫線の位置が区切りとして働きますが、文字として取り出すとその情報は失われます。
このため、抽出の手順は版面の情報をどこかで補う必要があります。位置の座標を使うか、区切りの記号を手掛かりにするか、見出しの言葉を頼りにするか、方法はいくつかあります。どの方法にも弱点があり、段組みに強い方法は表に弱い、ということが起こります。
固定データにこれらの形を混ぜておくと、方法を変えたときにどこが良くなりどこが悪くなったかを測れます。一種類の版面だけで確かめていると、改善したつもりで別の形が壊れていることに気付けません。
固定データは場面ごとに分けるべきか、番号で並べるべきか
場面ごとに分けるほうが役に立ちます。番号で並べた固定データは、増えた順に意味もなく並ぶため、何を覆っているのかが一覧から読み取れません。抜けている場面も見えません。
場面で分けると、名前を見ただけで何を試すものかが分かります。左右に分かれた書式、技能が札のように並ぶ書式、経歴が文章で書かれた書式、といった具合です。あとから「この形が増えた」となったとき、置き場所も自然に決まります。
期待される結果も、固定データと一対にして残します。入力だけを並べても、何が正しいのかが分からなければ、結果を比べようがありません。件数が増えても対応が崩れないよう、入力・期待・確認したい点の三点を一組にしてください。
毎回作り直すと失敗を再現できなくなる理由
自動で値を生み出す方法は便利ですが、解析の確認には向きません。同じ不具合が出たときに、同じ入力をもう一度用意できないからです。
不具合の再現では、入力が一字一句同じであることが要ります。少しでも違えば、別の分岐に入って症状が出なくなることがあります。すると原因の特定は振り出しに戻り、修正したつもりの変更が本当に効いたのかも確かめられません。
探索的な確認では、毎回違う値を出す方法にも利点があります。想定していない組み合わせに当たるからです。ただしその場合も、問題が見つかった時点でその入力を固定データとして保存し、再現できる形に移す必要があります。生み出す確認と再現する確認は、目的が違うのです。
開発者向け: 解析の用例と期待する項目
用例は、版面の形と確かめたい項目の組で書きます。どの書式の、どの項目を、どの程度拾えれば通すのかを一行にまとめてください。この形にしておくと、書式が増えても用例の追加が機械的になります。
期待の書き方には段階があります。完全に一致することを求める項目と、候補のなかに含まれていれば足りる項目を分けてください。氏名や年月のように一意であるべき項目と、技能の一覧のように順序が揺れてよい項目では、求める厳しさが違います。
固定データは、時間とともに古びます。作成の道具の版が変わり、見出しの言葉が変わり、扱う言語も増えます。定期的に見直す機会を決めておかないと、誰も通らない用例が静かに残ります。逆に、通らないことが分かっている用例を印付きで残しておくと、対応する範囲を決める材料になります。
次のステップ
まず、手元の固定データを一覧にして、それぞれがどの版面の形を覆っているかを書き添えてください。覆われていない形が三つほど見えてくるはずです。次に、そのうち一つを選び、入力と期待される結果を一組にして追加します。年月の扱いは職務経歴タイムラインのルールで、記録全体の組み立ては職務経歴テストデータの作り方で扱っています。入力そのものを用意するところから始めたいときは職務経歴データ生成ツールが使えます。
ここで述べた固定データと期待される項目は、いずれも確認のために組み立てた見本です。実在するどなたかの履歴書の内容を含むものではなく、そのまま経歴として提出できる性質のものでもありません。